中高年にとって、登山は手軽な趣味・・・
と、どこかにあった(けど)・・・そんなコターないよな
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16日午後3時55分ごろ、北海道新得町の大雪山系トムラウシ山(2141メートル)登山中の男性から「山頂付近でツアー客やガイド十数人が動けなく なっている」と110番があった。同日深夜~17日未明に男女4人が自力で下山したが、7人が山頂付近に取り残され、残る7人は下山途中とみられる。
さらに16日午後5時50分ごろ、美瑛町の同山系美瑛岳(2052メートル)でも、登山ツアー会社から道警に「登山中の6人のうち、女性ツアー客1人が 低体温症で動けなくなったようだ」と連絡があった。美瑛消防署などによると、救助隊が17日未明、兵庫県姫路市の尾上敦子さん(64)の心肺停止を確認し たという。
道警によると、トムラウシ山の登山者は、宮城1人▽静岡2人▽愛知5人▽岐阜1人▽広島4人▽山口1人▽岡山1人--の50~60代のツアー客15人 (男性5人、女性10人)と、付き添いの男性ガイド4人の計19人。ツアーは東京都千代田区の登山ツアー会社「アミューズトラベル」が企画した。14日に 旭岳から入山。白雲岳、忠別岳などの大雪山系の尾根を縦走し、16日にトムラウシ山から下山する予定だった。
道警やアミューズトラベルによると、16日はガイド1人以外の18人が山頂を目指したが、午前11時ごろに山頂付近で女性客1人が体温低下で動けなくな り、男性ガイド1人が付き添って、16人は下山を始めた。だが、同11時半ごろには別の女性客が意識を失ったため、山頂付近でこの女性を含む男女5人でビ バークを開始したという。
残る11人は下山を続けたが、このうち、男女3人が5合目に到着したところで110番した。同日午後11時半ごろにはこの3人のうち、広島市の亀田道行 さん(64)と前田和子さん(64)がトムラウシ山短縮コース登山口に到着した。17日午前0時55分ごろには、山口県岩国市の斐品(ひしな)真次さん (61)と仙台市の長田良子さん(68)がトムラウシ温泉付近に下山した。4人とも意識ははっきりしているという。
美瑛岳の登山者は、尾上さんのほか、姫路市の56歳女性と埼玉県草加市の女性、男性ガイド3人の計6人。15~19日にかけて、十勝連峰を縦断する予定 で、占冠村トマムから入山し、テントを張りながら、十勝岳を経由し、美瑛岳に向かっていたという。美瑛岳にいる男性ガイドから登山ツアー会社「オフィスコ ンパス」(茨城県つくば市)に対し、携帯電話で女性の異変を知らせる連絡があったという。道警などが救助に向かった。
釧路地方気象台帯広測候所によると、16日のトムラウシ山山頂付近の天候は、低い雲がかかっていた。風速20~25メートルの西よりの強風が吹き、日中の最高気温は平年並みの8度ほどだったとみられる。同日夜の山頂付近は横殴りの雨という。【田中裕之、和田浩幸】
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北海道大雪山系トムラウシ山と美瑛岳の遭難は2パーティー、1個人の計10人の死亡が確認され、夏山としては過去に例がない大規模遭難となった。
夏でも水が凍るといわれる大雪山系で、助かった男性は「寒くて死にそうだった」と振り返る。悪天候の中で予定を強行した判断に疑問を呈する声も上がる中、大雪山をよく知る地元の山岳関係者ですら「これほどの事故は記憶にない」とうめいた。
【関連写真特集 現場地図も】相次ぐ悲報、緊迫する救出の様子…大雪山系遭難 「午前4時36分、道警ヘリが男女2人を発見」「ヘリに収容、女性は心肺停止、男性は意識不明」--。
遭難の一報から12時間余りが経過した17日午前4時40分。前日の暴風雨がウソのように静まったトムラウシ山登山口(新得町)に設けられた現地対策本部の無線から切迫した声が響いた。「これはダメかもしれない」。救助隊を指揮する西十勝消防組合の幹部がつぶやいた。
約10分後、無線で伝えられた男女2人のうち、女性を収容したヘリが登山口の空き地に着陸。紫のヤッケを着て、フードを頭からスッポリとかぶった女性が道警の機動隊員に抱きかかえられて降ろされ、待機していた救急車へ。登山靴、黒のスパッツをはめた両足はダラリと垂れ下がり、目は閉じられたまま。顔は血の気はなく、真っ白だった。
一方、助かったツアー客の中からは、悪天候の中で登山に踏み切ったガイドの判断ミスを指摘する声も上がる。午前4時半ごろに下山したツアー客の一人、愛知県清須市の戸田新介さん(65)は15日の晩に泊まったヒサゴ沼避難小屋を出発する時、朝から風が強いと感じたという。「ガイドは出発すると判断したが、無謀だと思った」と説明。遭難時の様子について、「寒くて死にそうだった。ガイド1人が付き添って下山を始めたが、ペースが速すぎてちりぢりになってしまった」という。
◇雨具を着ても全身ずぶぬれ
北海道清水町の清水赤十字病院では17日午前6~8時ごろ、トムラウシ山の男女7人が4回に分けて搬送され、このうち5人(男性1人、女性4人)は死亡を確認した。いずれも雨具を着ていたが、全身がずぶぬれの状態だった。遺体は同日中に隣町の新得町民体育館に運ばれる。
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北海道大雪山系のトムラウシ山(2141メートル)と美瑛岳(2052メートル)に登った2パーティー計24人が遭難した事故で、道警は17日午前までに、トムラウシ山で女性6人、男性2人、美瑛岳で女性1人の死亡を確認した。
またこれらパーティーとは別に、単独でトムラウシ山に登ったとみられる男性1 人の死亡も確認された。
多数の死者が出たことから、道警は業務上過失致死の疑いもあるとみて捜査を始めた。ガイドや救助者らから事情を聴く。
道警によると、トムラウシ山のパーティーは32~69歳の男性5人、女性10人、男性ガイド3人で計18人。道警や自衛隊は17日早朝からヘリコプターで救助に向かい、13人を見つけ搬送したが、このうちガイド吉川寛さん(61)=広島県廿日市市=や登山客川角夏江さん(68)=名古屋市緑区=ら 59~69歳の8人が死亡した。ほか5人は意識があるという。広島市東区の亀田通行さん(64)ら5人は自力で下山した。
パーティーは宮城、静岡、愛知、広島など7県から13日に北海道入り。17日までの日程で登山する計画で、16日にトムラウシ山に登った後、温泉に宿泊する予定だった。 ツアーを企画した旅行代理店によると、女性客1人が低体温症になり、吉川さんがテントを張って付き添った。その後、女性客3人と男性客1人も低体温症になり、ガイド多田学央さん(32)もテントを張って付き添い、残りのパーティーで下山したという。
一方、美瑛岳では、茨城県の旅行代理店を通じて参加した女性3人と男性ガイド3人のパーティーのうち、兵庫県姫路市の尾上敦子さん(64)が死亡した。16日午後に救助要請があり、尾上さん以外の5人は衰弱しているが、生命に別条はないという。
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登山家の田部井淳子さんの話 「3泊4日の長い登山の最後で体力が落ちていたところに、雨に降られ風に吹かれたのだろう。ぬれた状態で風が吹くと体温が 急激に下がり低体温症になるケースがある。
突然歩けなくなり意識がなくなることもある。ガイドはすべての客の様子をきちんと見ていたのだろうか。ツアーに は体力がある人もない人もいる。1パーティーで19人という人数も多すぎる。パーティーは基本的に分かれてはいけない。天気が悪ければ引き返したりとどま ることもできたはずだ。
ツアーだと飛行機などの予定が決まっているために行動計画に無理をしていなかったのか。ガイドがなぜ今回の判断をしたのか疑問だ」
北海道・大雪山系トムラウシ山と美瑛岳で10人が死亡した遭難事故は、山中での雨や強風という悪条件が重なった結果、登山者の体温と体力が急激に奪われた。
帯広測候所によると、16日の大雪山系は雲の様子から雨が降っていたとみられ、十勝地方には正午ごろから午後8時ごろまで強風注意報が出ていた。
北海道の高山は標高2千メートル程度だが、北に位置するため3千メートル級の日本アルプスに匹敵する低温になる。ぬれた体に吹き付ける強風は急激に体温と体力を奪い、低体温症で機能不全に陥ったり、疲労凍死を招きかねないという。
夏でもみぞれや雪が降ることもまれではなく、冬山を意識した登山装備が必要。さらに北海道の登山ルートは山小屋が少なく、避難ルートも時間がかかることから、高齢者らは体力に配慮が必要とされている。
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標高2000mで風速25mだった・・・(らしい)
同社の中級レベルを踏破したことがあれば、
参加できる権利があるという・・・
毎日が累積標高1500mオーヴァー
今どきの高齢者ツアーってこんなん?
■どう見ても、永年の通いを入れた者のみが堪能できる山域
帰りの航空券持って、サクッと掠るエリアではないよな
■山麓に居を移して、四季の変化とともに山と暮らしを入れる・・・
・・・そんな覚悟は不可欠
悪条件重なり「低体温」…大雪山系遭難(上)
7月18日2時53分配信 読売新聞
拡大写真 |
トムラウシ山に入る際、注意を促される登山者たち |
北海道大雪山系で10人の死亡者が出た遭難事故。
高山植物が咲き誇り、登山者が集中するこの季節に、中高年登山者を襲ったのは、風速20メートルを超す強風と冷たい雨だった。死因は低体温症と凍死とみられている。
厳冬時とは異なり、夏の登山は中高年でも比較的気軽に楽しめるイメージがあるが、今回の事故は、時に夏山が登山者に牙をむくという現実を改めて突き付けた。(北海道支社 井沢宏明、野依英治)
「ひと夏に2、3回あるかないかのひどい暴風雨だった」
首都圏のツアー客を連れてトムラウシ山(2141メートル)を目指した山岳ガイドの宮下岳夫さん(52)は16日の天気をこう振り返る。宮下さんはその前日、登頂を断念し、途中で引き返した。
9人が亡くなったトムラウシ山は、登山口から山頂までが遠く、縦走するには距離が長いことで有名だ。遭難当日、18人のパーティーが目指したのは8時間以上かかるルートだった。途中、山小屋は一つもなく、広い尾根では風雨にさらされっぱなしになる。
札幌管区気象台によると、16日の札幌上空1500メートルの気温は11・4度で、平年より2・1度低かった。帯広測候所の観測では、風速20~25 メートルを記録し、降雨も確認されている。これらの観測データから、同気象台は「トムラウシの山頂付近は10度以下の気温だったとみられ、20メートルを 超す暴風が吹き荒れていたのではないか」と推測する。
長野県警の山岳救助隊を30年以上にわたり指導してきた同県山岳遭難防止対策協会講師の丸山晴弘さん(68)は「強風による体感温度の低下を考慮せず、夏山で低体温症に陥った典型例ではないか」とみる。
登山と低体温症に詳しい苫小牧東病院の船木上総副院長によると、気温がそれほど低くなくても、強風や、体に付着した水滴が蒸発する際の気化熱が体温を奪 うという。「強風の影響で、遭難した登山者の体感温度は氷点下5度より低かったはず」と船木副院長。風が強く降雨もあった今回は、低体温症を引き起こす条 件が重なっていたとみられる。
亡くなった10人の年齢は59~69歳。中高年だったことも被害を大きくしたようだ。日本登山医学会理事の増山茂・了徳寺大学学長は、「中高年の人は、 体熱を作る能力や体内の異変を察知する感受性が若い時より衰えている。自分の体温が下がっていることに気づかず、手遅れになってしまう場合も多い」と話 す。
◆低体温症=低い外気温などで体温が下がり、身体の機能が不全に陥る疾病。重症になると、錯乱を起こしたり、歩行が困難になったりする。体温が25度以下になると死亡する場合が多い。
技量に差、意思疎通不足も…大雪山系遭難(下)
7月18日2時55分配信 読売新聞
旅行会社「アミューズトラベル」(東京)が主催したツアーの参加者らが遭難したトムラウシ山。
最近は、こうした「公募パーティー」で登山を楽しむ中高年の愛好家が増えている。手軽さの陰に事故の要因が潜んでいると指摘する声もある。
「公募で集まったメンバーは、ほとんどが初対面。コミュニケーション不足が危険を招きかねない」。こう語るのは、中高年のパーティーを国内外の高峰に案内してきた日本勤労者山岳連盟理事の石原裕一郎さん(46)。
何度か公募パーティーに参加した経験がある女性(70)も、「参加者の体力や技術に差があったため、隊列が長くなって、はぐれそうになったことがある」 と証言する。悪天候に見舞われ、先に進むか引き返すかでパーティーの意見が真っ二つに割れるという事態も、この女性は経験したという。
今回のアミューズトラベルのツアーに参加した15人は、広島、中部、仙台の各空港から新千歳空港に到着する便を利用して集まった即席パーティーだった。
登山家の田部井淳子さん(69)は公募パーティーについて、「1人では難しい山にも気軽に登れるなど魅力がたくさんある」としながらも、「見知らぬ人ばかりのため『きつくて歩けない』と言い出しにくい雰囲気になる」と問題点を強調。
さらに「帰りの飛行機の時間が決まっており、天気が急変しても、日程を変更しにくい面がある」と話し、「予備日を設けているなど、余裕のある日程の組まれたツアーを選んだ方がよい」と参加者にアドバイスする。(後藤将洋)
大雪山系遭難:前例ない10人死亡 夏の大雪山系で惨事 /北海道
7月18日11時0分配信 毎日新聞
◇日程やガイドなど慎重に捜査--道警
大雪山系のトムラウシ山と美瑛岳で10人が亡くなった山岳遭難事故は、夏山では前例のない惨事となった。過去の山岳遭難を巡っては、ガイドが業務上過失
致死罪に問われて有罪になったケースもあり、道警はツアーの日程が過密でなかったか、ガイドのツアー客引率が適切だったか--など慎重に調べる。
登山ツアーの遭難事故でガイドの刑事責任が問われた初のケースは、99年9月の羊蹄山(1898メートル、後志管内倶知安町など)遭難事故。男性ガイドが関西の登山ツアー客の女性2人を凍死させたとして業務上過失致死罪で起訴された。
裁判ではガイドに注意義務違反があったか否か、凍死は予見可能だったか--が主な争点になった。札幌地裁は04年3月、「2人が集団から離れたことに気
づいたが、遅れて来ると考えて登山を続け、道に迷わせ凍死させた」として、ガイドに禁固2年、執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。
また、トムラウシ山で02年7月、台風が接近して風雨が強かったにもかかわらず、男性ガイドが福岡県の女性ツアー客に増水した川を渡らせ、客が凍死した事故も刑事裁判になった。札幌地裁は04年10月、ガイドに禁固8月、執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。
今回のトムラウシ山の遭難事故では、悪天候にもかかわらずガイドは予定通りに出発し、ツアー客の一人は「無謀だと思った」と話した。美瑛岳でもガイドが同様の判断をしていた。現時点では当時の詳しい状況は不明だが、北海道山岳ガイド協会幹部は「検証は必要」と指摘する。
◇本州の登山者は「軽装」 気温急変に対応できず
遭難者はいずれも本州からの登山ツアー客だった。本州ではある程度の登山経験があったとみられるが、北海道は夏でも気温が氷点下になる。専門家は本州と北海道の夏山に対する認識の違いが遭難につながった可能性もあるとみている。
札幌市内で登山用品小売業を営む栃内(とちない)譲さんは「道内の登山者ならば、普段の生活で『夏でも寒くなる』ことを知っているので、夏山にもフリー
スを持っていく。しかし、本州のツアー客の認識は異なる」と指摘。道内の夏山は本州からの登山ツアー客が目立つが、栃内さんは「軽装で出かける人が多いよ
うな気もする」という。
また、北海道山岳ガイド協会の川越昭夫会長は「中高年の趣味として手軽という登山の一面が裏目に出た」と話す。警察庁によると、08年の山岳遭難は
1631件(前年比147件増)、遭難者は1933人(同125人増)。年代別にみると、中高年の登山ブームを反映して、60代が576人で最も多く、
50代が370人、70代が340人--と続く。40歳以上の中高年は1567人に達し、全体の81・1%を占めている。川越会長は「中高年は『自分はま
だ若い』という気持ちを捨てきれない。晴れている時はよいが、天候が崩れると、やはり、体力がなく、低体温症に陥りやすい。中高年の登山は体力的に無理の
ない計画と十分な事前準備に配慮する必要がある」と警鐘を鳴らす。
◇ツアー業者に安全対策求める--高橋知事
高橋はるみ知事は17日、「道内の山は夏でも気象の変化が激しく、十分な装備と経験、体力を必要としている。このことを周知していく必要がある」と述べ、登山ツアー業者に安全対策を徹底するよう通知する考えを明らかにした。
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◇遭難・救出ドキュメント
■トムラウシ山
▽16日
午前5時半ごろ 18人のパーティーが大雪山ヒサゴ沼の避難小屋を出発。トムラウシ山山頂を目指す
同11時ごろ トムラウシ山頂付近で女性が体温低下で動かなくなる。男性ガイド1人が付き添い、残る16人は下山
正午ごろ 山頂付近で別の女性も体温低下で意識不明。この女性を含む女性3人と男性2人の計5人でビバークを始める
午後3時55分 男性ガイド1人と2人が5合目まで下山。110番で救助を要請
同4時45分 ビバーク中のガイドからツアー会社に「下山できない。救助要請します」とメールが届く
同5時15分 同じガイドからツアー会社に「4人ぐらいダメかもしれないです」とメール
同11時45分 道が自衛隊に災害派遣要請
同11時50分 広島市のツアー客の男女2人が登山口付近に自力で下山
同11時59分 先に下山していた2人が登山口に到着し道警救助隊員と接触
▽17日
午前0時55分 仙台市の女性と山口県岩国市の男性が登山口に自力で下山
同3時55分 道警山岳救助隊や自衛隊鹿追駐屯地などの約40人がトムラウシ山の捜索を開始。道警と自衛隊のヘリコプターも出動
同4時35分 トムラウシ山の中腹で倒れている女性を発見。ヘリコプターで収容。後に死亡確認
同4時45分 愛知県清須市の男性が自力で下山
同5時ごろ 中腹で別の女性を発見、ヘリコプターで収容。後に死亡確認
同5時10分 下山中の浜松市の女性を発見し、ヘリコプターで救出
同5時35分 頂上付近で意識不明の男性を発見、収容。後に死亡確認
同5時45分 頂上付近でビバークのためテントを張り、手を振る登山者を発見
同6時半ごろ 頂上付近で女性1人を救助。意識なし
同6時50分 頂上付近で男性3人、女性4人を救助。このうち、男性1人、女性3人が意識なし。後に死亡確認
同9時半ごろ 自衛隊が頂上付近で、単独で登山していた茨城県笠間市の男性の遺体を発見
同10時45分 中腹の残雪地帯で、最後の行方不明者となっていた男性ガイドが倒れているのを別の登山客が発見。命に別条はなし
同11時20分 死者5人と生存者5人のヘリ搬出完了
正午 捜索活動を終了
■美瑛岳
▽16日
午後5時50分 茨城県つくば市の登山ツアー会社から道警に「美瑛岳にいるパーティー6人のうち、女性客1人が低体温症で動けなくなったようだ」と連絡
同6時 消防防災ヘリ要請
同8時26分 美瑛町役場関係者、消防、警察の計9人の救助隊が登山開始
同9時20分 道警山岳救助隊などが美瑛富士の登山口から美瑛岳へ向かう
▽17日
午前0時40分 美瑛富士の避難小屋で、救助隊が美瑛岳で遭難した6人のうち3人を保護。その後、同所から約2キロの地点でビバーク中の3人も発見。避難小屋で兵庫県姫路市の女性の死亡を確認。他の5人は命に別条なし
同3時 救助隊2次隊6人が出発
同5時04分 ビバークしていた男女2人が消防防災ヘリで救出される
同6時33分 避難小屋の女性の遺体をヘリで搬送
同7時10分 残る3人が救助隊とともに下山開始
同9時50分 美瑛富士登山口に無事、到着
ガイド「天候、昼には回復」、実際は悪化…大雪山系遭難
7月20日3時11分配信 読売新聞
山頂付近を調べる救助隊員ら=北海道のトムラウシ山で2009年7月17日午前9時44分、本社機から三村政司撮影 |
一度に10人が命を落とした大雪山系の遭難事故。夏山でなぜこれだけの死者が出たのか。登山や救助関係者からは、ガイドの判断ミスとともに、装備の不十分さや、中高年にとっては無理な日程が犠牲を拡大させたとの指摘が出ている。遭難した16日に何が起きていたのか--。
トムラウシ山で遭難した18人が避難小屋を出発したのは、16日午前5時半ごろ。当時、避難小屋にいた静岡県の男性(66)は「雨と風で体感気温は相当
低く、リュックカバーが風で吹き飛ばされ、岩にしがみついて四つんばいで歩くような状態だった」と過酷な気象状況を振り返る。
18人の中には出発を不安視する人もおり、午前11時ごろ、その不安が現実となる。山頂付近で女性客が動けなくなった。女性客はガイドとともに現場に残 り、16人は下山を続けたが、約1時間後、別の女性客も意識不明に。その後も、ガイドのペースについていけず、脱落する人が相次いだという。
10人の死因は、強風や雨で急速に体温が低下する低体温症による凍死とみられる。帯広測候所によると、トムラウシ山頂では当時、雲がかかり、雨が降って いたとみられる。日中の気温は8~10度とされ、風速は20~25メートルと台風並みだったとみられる。札幌医科大の山蔭道明医師は「真冬日の雨風の中を 歩くようなものだったろう」と指摘する。
高齢者にとって低体温症は危険だ。若い人よりも寒さや暑さへの感度が鈍いため、今回のように「寒い」と気づいた時には手遅れで、動けない状態に陥ってしまうことがある。
体温が35度以下になると、低体温症となり、震えが始まる。33~32度になると動けなくなり、30度以下で意識がなくなるとされる。山蔭医師は「雨風のなかを強行せず、体温・体力を回復させてから先へ進む必要があったのではないか」と指摘する。
一方、ヘリで遭難者の救助にあたった陸上自衛隊の2等陸尉(32)によると、死亡した人の中には、薄い雨ガッパに長袖シャツ、スラックス姿や、持ってきた予備の服を体に巻き付けたまま倒れている人もいたという。
救助活動にも参加した地元の「新得山岳会」の小西則幸事務局長は「軽装のほか、無理な行程が事故を招いたのではないか」と疑問を投げかける。パーティー は4泊5日の日程。小西事務局長は「事故のあったコースはベテランでも体力的にきつく、できればもう1泊追加することが望ましい」と指摘する。
アミューズトラベルの松下政市社長によると、各ツアーには内容ごとに体力度・技術度での参加基準を設置。今回の体力度は、6段階で上から2番目の「四つ 星(やや健脚)」、技術度5段階中は3番目の「二つ星(やや難しい)」だった。防寒具や登山靴、レインウエアなどのリストを手渡し、各自でそろえてもらう のが登山ツアーの参加条件という。
だが、軽装の参加者がいたことについて、松下社長は「ガイドが装備品のチェックをしたかどうか今はわからない」と言葉を濁した。【吉井理記、和田浩幸、山田泰雄】
“装備 本人の責任で用意”
北海道・大雪山系のトムラウシ山で8人が死亡した遭難事故で、登山ツアーを企画した東京の旅行会社の社長が19日会見し、事故についてあらためて陳 謝するとともに、参加者の防寒対策については、「会社側は装備品のリストを渡しており、本人が責任を持って用意するのが基本だ」という認識を示しました。
今回のツアーを企画した東京の旅行会社「アミューズトラベル」の松下政市社長は19日、トムラウシ山のふも との新得町で記者会見し、「事故の大きさを日に日に痛感しています。ご遺族に心からおわび申し上げます」とあらためて陳謝しました。そのうえで、8人の死 因がいずれも「凍死」で、装備に問題があったと指摘されていることについて、「事前に必要な装備品のリストを登山者に手渡したうえで行きのバスの中で口頭 で確認している。
登山者本人が責任を持って用意するのが基本だ」という認識を示しました。また、ツアーのガイドから聞いた話として、「当日の朝避難小屋を 出発したときは疲れて歩けないような人はいなかった」と述べ、当初は登山者の体調に問題はなかったとの考えを示しました。さらに、ツアーの日程に予備日が なかったことについては、「国内の夏山の登山では予備日を設けないのが一般的だ」と述べました。
今回の遭難事故で、警察は悪天候の中で登山を続けたことや ツアーの日程に余裕がないことなど、会社側の安全管理に問題があった疑いがあるとみており、引き続き松下社長らから詳しく事情を聴くことにしています。一 方、今回の遭難で亡くなった8人の遺体は遺族に付き添われながら19日、それぞれの自宅に向かいました。8人の死因は旭川医科大学が詳しく調べた結果、い ずれも凍死とわかり、遺体は18日夜遅く新得町の体育館で待つ遺族のもとに戻りました。
そして19日午前8時半すぎに、遺族といっしょに車で体育館をあと にし、遺族は時折ハンカチで顔をぬぐって静かに付き添っていました。遺体を乗せた車は、いずれも新千歳空港に向かい19日中にそれぞれの自宅に帰ることに なっています。
※参加者によれば、「気楽な観光気分だった」「トムラウシの知識はまるでなかった」・・・
大雪山系遭難:「午後から晴れる」 ガイド判断誤る?
北海道大雪山系のトムラウシ山(2141メートル)で旅行会社「アミューズトラベル」(東京都千代田区)が企画した登山ツアー客ら8人が遭難死し た事故で、ツアーの男性ガイドが16日早朝の出発直前、「午後から晴れるから大丈夫」と話していたことが分かった。ガイドと同じ避難小屋にいた別のパー ティーの男性が証言した。道警は、暴風雨にもかかわらず、ガイドが判断を誤ってツアーを継続した可能性があるとみてガイドから事情を聴いている。
ツアーの18人と15日夜にトムラウシ山北側の避難小屋で一緒に泊まった静岡県の男性(66)によると、16日午前3時半ごろに起きたところ、外は雨が降り、風も強く、出発を見合わせていたという。
その後、ツアーのガイドが「午後から晴れるから大丈夫だ」と話し、同日午前5時半ごろに18人が出発。間もなく男性らも小屋を出た。しかし、風雨はますます強くなり、岩にしがみつきながら進むような状況だったという。
釧路地方気象台によると、16日午前5時の十勝地方の天気予報は「曇り、昼過ぎから晴れ」。ガイドはこの天気予報で「午後から晴れる」と判断した とみられる。しかし、十勝地方は同日昼にかけて風が強くなり、同日午前10時半ごろには、ツアーの女性客1人が寒さによる低体温症で動けなくなった。午前 11時25分には強風注意報が出た。
北海道山岳ガイド協会の川越昭夫会長によると、ガイドは山の気候が少し遅れて変わることを念頭に自ら天候を予測するという。【和田浩幸、水戸健一】
7年前 トムラウシ山で遭難 母の死 なぜ学ばぬ
2009年7月23日 13時51分
「あの時と同じルートで、同じ悪天候。なぜこんなにも犠牲者が出てしまったのか」。北海道大雪山系のトムラウシ山(2、141メートル)で、ア ミューズトラベル(東京都千代田区)主催のツアーに参加した客とガイドの8人が命を落とした惨事から23日で1週間。その同じ山で7年前、葛西あき子さ ん=愛知県東海市荒尾町、当時(59)=が逝った。遭難の知らせは、長男の功一さん(42)=同=に「あの時」を思い起こさせた。 (太田鉄弥)
「えっ」
十六日夜、携帯電話のニュース速報で表示された文字にくぎ付けとなった。トムラウシ。忘れられない名前だった。あき子さんは登山仲間三人とともに二〇〇二年七月、大雪山系を縦走。最終日の十一日朝、台風が近づきつつあったが、小屋を出た。
下山まで十時間かかる長いルート。山頂付近は遮る物がなく、強風で歩けない。雨が容赦なく体温を奪う。体感気温は氷点下。あき子さんは低体温症で動けなくなり、命を落とした。近くで、別の一行の女性=当時(58)=も亡くなった。
今回もまた、強風と雨が命を奪った。「小屋を出なければ、何も起きなかった」。悪天候で抜けられるようなルートではないという七年前の教訓は、生かされなかった。
「本格的な山は、これが最後ね」
出発前、珍しく電話をくれた母と、北海道新得町の遺体安置所で再会した。化粧を施された顔は、眠っているかのようだった。
夜、父の義美さん(73)と弟の男三人で、警察が手配してくれた宿の温泉につかり、座敷でビールを飲んだ。会話らしい会話はない。頭の中は真っ白だった。
翌日、ひつぎに入った母を連れて帰る空港で告げられた。「遺体は貨物の手続きとなります」。母の“運賃”は、キロ単位で計算され、八万数千円。現実を突き付けられた。
明るかった母。息子二人、娘一人を育て上げ、四十代半ばで登山を始めた。日記に、日本百名山のうち訪れた九十以上の名峰と、出合った高山植物が記されていた。
「好きな山で死んだ母は、本望だったんじゃないだろうか」
何とかそう思えるようになったのは、四年ほど過ぎてから。当時の新聞記事の切り抜きを毎日眺めては悲しみに暮れる父も、「本望だろう」とようやく賛同してくれた。
それだけに、今回の遭難で残された遺族や友人が直面する喪失感は人ごとではない。
より安全であるべきツアー登山で、悲劇が繰り返された。功一さんは問う。「七年前のことに学んでいれば、小屋にとどまるという判断があったかもしれない。ツアー会社は安全の確保を真剣に考えてきたのだろうか」
(東京新聞)
トムラウシ避難小屋新設を新得町が要請へ (07/23 07:06)
【新得】十勝管内新得町のトムラウシ山で本州の登山ツアー客ら9人が死亡した事故を受け、同町の浜田正利町長は22日、同山への避難小屋新設やガイドの国家資格制度創設など再発防止策を、国や道の関係機関に要請することを検討する考えを明らかにした。
トムラウシ山には、今回事故が起きたヒサゴ沼から短縮登山口まで、通常で8~9時間かかるとされるルート間に避難小屋がなく、以前から天候悪化や負傷な どのため日暮れまでに下山できないケースがある。浜田町長は「避難小屋新設は環境への影響などを考える必要があるが地元として要請を検討する。ガイドにつ いては登山者の命を守るために、より厳格な資格制度が必要だ」と話している。
【緊急企画 夏山遭難】トムラウシ山の惨事(上) WEB TOKACHI
2009年07月18日 15時11分 トムラウシ山で中高年の登山ツアー客18人が遭難し、8人の命を奪った遭難事故。ツアー客はどういう状況下で山頂を目指したのか。夏山での惨状を報告する。
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暴風雨の中 出発
生還へ「歩こう」 意識失う仲間、全員散り散り
「死んでしまうと思うぐらい寒くて、とにかく下りてきた。2人は意識がもうろうとしていた。ガイドが先に行けと言うので、全員が散り散りになった」
登山ツアーの1人、戸田新介さん(65)は17日午前4時半、東大雪荘に極度に疲労した様子で現れ「女の人たちはしゃがみこんでいて(死んでしまうから)歩こうと言ったが、ダメだった」と無念さをにじませた。
午前5時半出発
ツアーは16日午前5時半、ヒサゴ沼避難小屋を出発した。小屋に宿泊していた登山客によると、当時、小屋には、18人のツアー客と、静岡県の6人のパー
ティー、2人の夫婦の3組が宿泊。2人の夫婦は旭岳に北上するルートのため、ツアー客と静岡のパーティーの2組がトムラウシに向かった。
かろうじて生還した静岡のパーティーのリーダー男性(66)は「前日から雨風がすごかったが、当日未明にちょっとおさまり、前線が通り過ぎたと思って出発した。特に風が強く、雨は降っていた」と出発当時の気象を語る。
ツアー客が午前5時半、静岡のパーティーが同5時35分に小屋を出発。ツアー客に200メートル遅れて、静岡のパーティーが歩いていた。「このペースで はやばい」。男性は危険を感じた。強さを増す暴風雨。「真冬のような寒さでは体力が消耗する。前日、体力を温存したが、山頂前の岩場あたりで時間的にもま ずいと思った」。午前9時、ツアー客が2度目の休憩中に、静岡の6人は追い越した。
この男性と一緒に山を登った女性は登山歴50年のベテラン。「ツアーの女性は足がすくんで動けないようだった。私だって17キロの荷物を背負っていても、吹き飛ばされたぐらい風が強かった」と言葉少なげに語った。
リーダー男性は「山頂の湖が海原のように波打ち、風に飛ばされた水しぶきが吹きつけてきて、立っていられない。四つんばいで進んだ。われわれもツアー客 と同じように危険だった。仲間の1人が遭難しそうだったが、私が女性の荷物をかつぎ、助け合って頑張ってなんとか下りてきた」と語る。
隠れる場所なし
トムラウシ山に年7、8回は登るという、十勝山岳連盟の太田紘文会長(69)は「20−25メートルの風では、ツェルト(非常用テント)はもたない。テン トもはじめから立てていないと無理」と語る。特に7人が発見され、うち4人が犠牲になった北沼は「頂上も含め、半径2キロは隠れるところも何もない。風の 吹き抜ける場所」。
ツアーの企画会社・アミューズトラベルによると、ガイドを務めた3人はいずれも登山経験は豊富だったが、2人は同コースは初めて。
太田会長は「挑戦と無謀は違う。天候判断には臆病になるくらいでないと」と指摘する。自然の驚異に逆らった行動の判断はどうだったのか−。山岳史上に残る大惨事が起こるのは、必然ともいえた。
【緊急企画 夏山遭難】トムラウシ山の惨事(下) 2009年07月19日 15時11分 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
トムラウシ山南側の前トム平からの眺め。好天時は広々した景観が広がり、中高年に人気の登山コースだ(2004年9月撮影) 「誤り」招く強行出発 登山ブームに潜む危険 「引き返す勇気必要」 「ひとことでいえば、余裕のない行程で、天候判断よりも強行を決断した行動判断の誤り。最近のツアー動向を見ていると、いつかは事故が起きると思っていたが…。ツアー参加者が多いため、大惨事になってしまった」。十勝山岳連盟の太田紘文会長(69)は、地元・トムラウシ山(2141メートル)で一夜にして9人の命が奪われた悔しさをにじませる。
大雪山系のほぼ中央に位置する独立峰・トムラウシ山は、日本百名山の1つにも数えられ、多くの登山者のあこがれの山。登山人気に加え、昨今の健康志向ブームもあり、中高年の登山熱は高い。80歳近い人が、百名山の最後に残った山として来ることもあるという。 事故、過去最多8割以上中高年 一方でブームの裏には危険も見える。警察庁によると、国内の山岳遭難は昨年、件数、人数、死者ともに過去最多で、8−9割は40歳以上。トムラウシ山の登山ルートはいずれもアプローチが長く、上級者向けといわれている。
「日帰りでも10−12時間行程。ロープなどを使うわけではないが、体力的なものと天候判断も含め、厳しい山」と地元山岳関係者。「訓練ではなく、楽しむために来ているはず。年齢を考えれば余裕を持って登ってほしい」と、今回の救助にも携わった新得山岳会の小西則幸事務局長(57)は訴える。 「いかに危険を回避して安全に登るかを考えてほしい」などと語る太田会長 避難小屋頼りの宿泊計画タブー
太田会長は、本州からの一部ツアーには今回のように、テントを張らずに避難小屋を目指すケースも多いと指摘する。北アルプスなどは2、3キロごとに管理人付きの小屋があるが、東大雪は天候に恵まれても8時間も歩かないとたどり着かず、「避難小屋の宿泊を目的に渡り歩いてくるのはタブー」。 さらに好天前提で余裕のない行程にも疑問を投げかける。アミューズトラベルの松下政市社長は記者会見で、日程に縛られて安全を害することは「なかったと思う」と語った。だが事故当日、登山を取りやめたり、引き返してきた人も多かった。
「計画があるから、早く温泉まで行こうという気持ちが強かったのでは。ヒサゴ沼(避難小屋)に引き返す勇気が必要だった」と太田会長。地元ツアー会社では、登山に必ず平地での観光日程を入れ、山での万一に備えるところもある。別の山岳関係者からは「北海道の山をなめている」と怒りの声も上がっている。
参加者とガイド割合に疑問の声 18人に対してガイドが3人という割合も問題視される。しかも2人はトムラウシ山は初めてだった。ガイドパーティーは、山岳会のパーティーと違い、あちこちからの集合体。関係者からは「連帯感がなかったのでは」との声も漏れる。「体調も経験も実力もお互いによく分からない中では、さらに判断を慎重にしなくてはならなかった」と、登山専門誌の男性編集部員(41)。
経験や体力の差が、いざというときに出る。無理な行程を取るとその差は開く。今回はちりぢりになり、生死を分ける差となった。名実ともに自力で生き延びるしかなくなった。ガイドの指示、判断がどうだったかは今後の捜査で明らかになるが「全員を把握するには4人に1人くらいは必要とされる」との見方もあり、そこに原因の1つはあると見る専門家は多い。 花が多く、変化に富んだ素晴らしい山といわれるトムラウシ山。
「中高年対象の講習を21回行っているが、その受講生で遭難で亡くなった人はいない。難しいことではない。常に基本に、初心に帰ること」(太田会長)。東大雪荘によると、事故発生後、行程延期など、天候判断に慎重な登山者が増えたという。大きな犠牲を払ってしまった今、後に続く人たちが教訓にできるか試される。
トムラウシ山遭難事故(Wiki)==========================
トムラウシ山遭難事故(とむらうしやまそうなんじこ)とは、2009年7月16日早朝から夕方にかけて北海道大雪山系トムラウシ山が悪天候に見舞われ、ツアーガイドを含む登山者9名が低体温症で死亡した事故である。夏山の遭難事故としては近年まれにみる数の死者を出した惨事となった。
目次 [非表示]
* 1 経過
o 1.1 7月15日
o 1.2 7月16日
o 1.3 7月17日
o 1.4 7月18日以降(救助活動終了後)
* 2 事故の背景
* 3 過去の事故
* 4 外部リンク
* 5 脚注 経過 [編集]
同ツアーは旅行代理店アミューズトラベル社(本社:東京都千代田区)が主催したもので、トムラウシ山や旭岳などを2泊3日で縦走する予定であり、50~60代の客15人(男性(A、B、C、D、E)、女性10人(a、b、c、d、e、f、g、h、i、j))とガイド甲、乙、丙の3人が参加していた。ガイドのうち甲、丙の2人は今回のコースは初めてだったという。
7月15日 [編集]
* 15日夜、一行は度重なる風雨に曝されながら十数時間かけてヒサゴ沼避難小屋に到着。しかし小屋の中は雨漏りだらけで濡れた装備を乾かすことも出来ず、ずぶ濡れのシュラフに包まって横になっただけであった。
7月16日 [編集]
* 翌16日、午前5時の出発予定であったが天候悪化のため待機。ガイドらはラジオで十勝地方の予報「曇り、昼過ぎから晴れ」と聞き、午後から天候は好転すると見越して出発を決定。ただし客の何人かはこの決定に不安を感じたという。一行は午前5時半頃に避難小屋を出発した。
* パーティは風速20~25mの暴風雨の中を飛ばされないよう慎重に、時に岩にしがみ付きながら進んだ。この時点で客の何人かは避難小屋に戻るよう要望したという。
* 午前10時半頃、北沼付近で女性1人が低体温症のため歩行困難となった。一行はツェルトを設営し付き添いのガイド甲を残して先に進んだ。
* 午前11時頃、前設営地から距離を置かずして別の女性1人が意識不明に陥った。ここで岩陰を探してテントを設営。この女性に加えて歩行困難になった女性2人と付き添いの男性1人、ガイド乙の計5人がこの場でビバークすることとなった。またこの場でも客から救助要請の要望が出たという[1]。
* 客10人とガイド丙はトムラウシ山頂を迂回し西側の平坦なコースで下山を続行した。この時ガイドは遅れた人を待つことなく大急ぎで進んだため列が伸びて全員を確認できなくなったという。
* 午後4時頃、ガイド丙と客2名が五合目「前トム平」に到着。ここでガイド丙は携帯電話から110番通報して救助要請を出しこの場にとどまった (ビバーク設置のためか歩行困難のためかは不明)。
* 一方、北沼付近のビバークではテントに入って程なく女性2人の脈拍が停止。さらにガイドBが前設のツェルトまで戻ったところ、女性とガイド甲ももはや絶望的な状況であった。午後5時前後、ガイド乙は同社の札幌営業所に社長あてで「すみません。7人下山できません。救助要請します」「4人くらいダメかもしれないです」と切迫したメールを送信した。
* 午後8時半頃、ガイド乙から新得署に携帯電話で連絡。状況説明と、近くに生死不明の男性1人が倒れていると伝える。
* 午後10時頃、ガイド乙から新得署への定時連絡なし。午後11時頃に署から電話するが電波不良のため通じず。
* 午後11時45分、新得町から自衛隊へ救助要請。
* 午後11時50分、男女2名が自力下山。
7月17日 [編集]
* 17日午前0時55分、男女2名が自力下山。
* 午前4時45分、男性1名が自力下山。 17日午前4時より道警、消防署、自衛隊などによる合同捜索が開始され、この一日でほぼ全員が救出されたが、すでに大半が意識不明か疲労困憊であった。 7月18日以降(救助活動終了後) [編集]
19日、この日の大雪山の死者は同ツアーに参加した8名、および別のツアーで来た1名と単独で来た1名、計10名と発表され、司法解剖の結果全員が低体温症による凍死であったことが確認された。 事故の背景 [編集]
* 帯広測候所によるとトムラウシ山頂では、事故当時は雲がかかり雨が降っていたとみられ、日中の気温は8~10度、風速は20~25mと台風並みだったとされる。生存者によると、「雨と風で体感気温は相当低く、リュックカバーが風で吹き飛ばされ、岩にしがみついて四つんばいで歩くような状態だった」とのことである。旭岳の別パーティもこのパーティと同じ天気予報を聞いていたが、山の天気が平地より遅れてくるとの経験則から夕方まで荒れると見越して中止している。
* ツアー客の装備に関して一部軽装備だったことが指摘されている。主催したアミューズトラベル社によると、登山の際は上着や非常食を持参する旨を通達していたというが、それが周知徹底されていなかったため同社の管理責任が問われている。ただし前日の雨天歩行で避難小屋までたどり着いている事から、急な天候変化に対応する程度の装備はあったと思われる。
* 総じて、パーティの年齢層、ガイドの不慣れ、ツアー客の装備と疲労蓄積、意思疎通の不備、天候の見込み違い、それらを押しての下山強行といくつかの要因が重なって起きた事故と言える。 過去の事故 [編集] なお、事故から7年前にもトムラウシ山では同様の事故が発生している。 ]
* 2002年7月11日、夏山登山に来た2組4名、8名のパーティーが暴風雨で遭難し山中に足止めされ、2日後に救出されたものの2名の女性が脳梗塞や凍死で死亡する事故が発生した。事故を発生させたガイドは業務上過失致死で起訴され2004年10月5日に旭川地方裁判所はガイドに対し禁固8ヶ月、執行猶予3年の判決を下した[2]。
十勝毎日新聞社ニュース
トムラウシ山遭難ドキュメント
16日午後3時54分 午後3時半に下山予定だった登山ツアー参加者から「トムラウシ山頂付近強風で下山不可能」と携帯電話で110番通報と救助要請
同5時ごろ 新得署に旅行会社を通じて「4人くらいだめかもしれない」という登山者からのメールが届く
同6時ごろ 新得署員3人が同山短縮登山口に車両2台で到着
同8時半ごろ 男性2人、女性3人のグループから新得署に携帯電話で連絡。女性1人が意識不明で、近くに別に倒れている生死不明の男性を目撃したとの内容
同10時ごろ グループから予定されていた携帯電話の連絡時間。連絡はなし
同10時15分 救急車が短縮登山口に到着
同11時すぎ 新得署に連絡があった携帯電話に電話するも不通
同11時45分 新得町が道を通じ自衛隊に正式に救助要請する
同11時50分 5人のうち亀田通行さん、前田和子さん=いずれも(64)、広島市=が自力下山。2人は当初3人で下山したが、途中で1人と離れたと話す
17日午前0時55分 温泉登山口に長田涼子さん(68)=仙台市=、斐品真次さん(61)=山口県岩国市=が自力で下山
同1時10分 自衛隊員が新得署に到着
同3時半 前田さんの話からツアー客らが離れ離れになった様子が判明し始める
同3時53分 警察、消防署員各3人計6人が短縮登山口から捜索登山を開始
同4時 道警航空隊、自衛隊ヘリコプターなど計3機が順次上空からの捜索を開始
同4時38分 前トム平で女性を発見。ヘリで収容し、短縮登山道から救急車で清水の日赤へ搬送。意識不明
同4時45分ごろ 戸田新介さん(65)=愛知県清須市=が短縮登山口に自力下山
同5時1分 前トム平で女性を発見。呼び掛けに応答なし。ヘリで引き揚げて帯広厚生病院へ搬送。意識不明
同5時16分 真鍋記余子さん(55)=静岡県浜松市=を発見、短縮登山口に降ろし、事情聴取。このときヘリから「1人硬直している」との無線が新得署に
同5時30分 自衛隊地上部隊が北沼付近で3人の生存者と4人が倒れているのを発見
同5時35分 トムラウシ分岐付近で意識不明の男性1人を帯広厚生病院に搬送、死亡が確認
同5時45分 道警ヘリが北沼西側付近で手を振っている2人、同東側に倒れている2人を発見した
同6時32分 南沼キャンプ場付近で寝袋にくるまっている男性1人を、先行していた地上部隊の1人が発見
同6時50分 自衛隊が男性3人、女性4人の救助完了。うち男性1人と女性3人が意識不明
同9時35分 ツアー関係者18人のうち17人の安否判明。生存者9人と死亡者8人と確認された
同9時36分 自衛隊ヘリコプターが南沼東側付近で、ツアー関係者以外の登山客とみられる男性1人の遺体を発見
同10時44分 登山客がコマドリ沢付近の雪渓で倒れている男性を発見し110番通報。男性は「マツモトヒトシ」と名乗り、ツアースタッフの松本仁さん(38)=愛知県一宮市=とみて救助、帯広厚生病院に搬送
テントなしで、寒さしのぐ=装備不十分で凍死か-大雪山系遭難事故・北海道警
8月17日16時7分配信 時事通信
北海道大雪山系の遭難事故で、9人が死亡したトムラウシ山(2141メートル)山頂近くで低体温症のためビバークした5人が、当初、簡易テントのツェル トのみで0度近い寒さをしのいでいたことが17日、道警への取材で分かった。道警は一行の人数に応じた十分な装備がなかったとみて調べている。
一行はガイド3人と客15人。強い風雨にさらされるなどして、客数人が体調を崩したため、7月16日正午すぎ、ガイド2人と客5人は山頂付近でビバーク した。残りは下山したが、ガイド1人がテントを持って下山組を率いたことから、ビバーク組はテントなしで救助を待つこととなった。
道警によると、救助要請のため携帯電話が通じる場所を探していたビバーク組のガイドが、約1キロ先の南沼キャンプ地近くで非常用に置かれたテントやガス コンロなどを偶然発見。湯を沸かすなどして客の保温に努めたが、2人は凍死した。また、近くでビバークしていた別のガイドと客もテントがなく凍死した。
大雪山系遭難1か月、ガイドらテント持たず野営
8月16日3時1分配信 読売新聞
読売新聞(読売新聞社)トムラウシ遭難 ガイド、ラジオ持たず 2日前の予報で天候判断 (08/23 18:31、08/23 23:30 更新)
大雪山系トムラウシ山(2141メートル)で7月、8人が死亡した遭難事故で、登山ツアーを主催した「アミューズトラベル」(東京)のガイド3人全員がラジオを持たず、遭難当日の天候を2日前に携帯電話サイトで確認した予報を基に判断していたことが23日、関係者の話などで分かった。 同社の遭難経過説明文などによると、遭難前々日の7月14日に避難小屋でガイドの1人が携帯電話の天気サイトで天気図を確認。この情報を基にガイドは15日夜に「(遭難した16日の天気は)午前中までは崩れるが午後からは大丈夫」と予想した。 同社関係者は、ガイドが遭難当日に天気予報を確認できなかったことについて「携帯電話の電波が通じなかった。テレビがあれば天気予報を確認するが、それがなかったので携帯電話しか頼れなかった」と説明。3人いたガイド全員がラジオを持っていなかったと明かしたうえ、「問題だったかどうかは分からない」と話している。 北海道道央地区勤労者山岳連盟の松浦孝之理事長(札幌)は「登山家であれば、ラジオで天気概況を聞き、自分で天気図を描いて天候の変化をみる。携帯電話でどの程度の情報を得られたのか疑問」と指摘している。
遭難事故あったトムラウシ山 避難小屋で場所取り横行 支庁、禁止周知へ (08/20 09:58)
ツアー会社による「場所取り」が問題になっているヒサゴ沼避難小屋
【新得】大雪山系トムラウシ山(2141メートル)で7月、8人が死亡した登山ツアーの一行が、最後に宿泊したヒサゴ沼避難小屋(定員30人)を訪れた。 同小屋では、道外ツアー会社による「場所取り」が横行、小屋を管理する十勝支庁に一般登山者から苦情が寄せられている。同支庁は「悪天候時の緊急避難とい う小屋の利用目的に反する」として、ホームページで禁止を周知する方針だ。<北海道新聞8月20日朝刊掲載>
ガイドが背負い小屋へ 女性、自力歩行できず 美瑛岳遭難死 (08/21 07:18)
【美瑛】7月の上川管内美瑛町の大雪山系美瑛岳(2052メートル)登山ツアー遭難事故で、凍死した女性=当時(64)=は、避難小屋に向かう途中で歩け なくなり、ガイドが数十分間、背負って移動していたことが道警などへの取材で分かった。女性がどのような状態で避難小屋にたどり着いたかは明らかになって いなかった。
自力歩行ができない登山者は、テントを張ってその場にとどまるビバークという方法もあることから、道警は背負って移動したガイドの判断が妥当だったか慎重に捜査している。
ツアーは登山客3人とガイド3人の6人で、7月16日から3泊4日で大雪山系の縦走を計画。道警などによると、死亡した女性は、16日午 後、美瑛岳に登頂後、約2キロ離れた避難小屋に向かう登山道の中間地点付近で、寒さを訴え自力歩行が難しくなった。ガイドは女性を背負って避難小屋まで運 んだが、回復せず凍死した。
亡くなった女性より前に別の女性も身動きがとれなくなったが、その場でビバークし助かった。このため道警は、ガイドの判断に問題がなかったかどうか、週明けに業務上過失致死容疑も視野に実況見分を行い、女性を背負って歩いた距離など詳しい状況を調べる。
美瑛岳遭難で道警が実況見分 当時の登山行程を再現 (08/24 09:31、08/24 15:48 更新)
実況見分で十勝岳に入山した旭川東署員ら=24日午前5時15分ごろ
【美瑛】上川管内美瑛町の大雪山系美瑛岳(2052メートル)で7月、女性登山客=当時(64)=1人が凍死した遭難事故で、旭川東署は24日、現場の実況見分を行った。
同署は亡くなった女性がどの地点で体調を崩し、ガイドがどのような経緯でビバーク(非常野営)せずに避難小屋に向かうと決めたのかなど、事故当時のガイドの判断に問題がなかったのかを重点に調べた。
この日午前5時に同署の捜査員5人と、ツアーを主催したオフィスコンパス(茨城県)のガイドら2人の計7人が、登山スタート地点の十勝岳中腹の望岳台に 献花した後、実況見分を始めた。7人は当日のコースと同様に十勝岳を登頂した後、美瑛岳山頂を経て、女性が運ばれた美瑛富士避難小屋に向かった。
道警は業務上過失致死の疑いでガイドや同社の捜査を進めており、ツアー客ら8人が凍死したトムラウシ山(2141メートル)の遭難事故でも、同容疑での立件を視野に近く実況見分を行う。
道警 山頂付近で実況見分 トムラウシ遭難 (08/26 09:56、08/26 15:29 更新)
遭難当日に一行が出発したヒサゴ沼避難小屋周辺で実況見分を行う道警の捜査員ら=26日午前8時55分、本社ヘリから(写真=中川明紀、動画=小室泰規撮影)
【新得】大雪山系トムラウシ山(2141メートル)で7月、中高年のツアー客ら8人が凍死した遭難事故で、道警は26日午前、山頂付近の事故現場で実況見 分を始めた。道警は、一行がたどった経路や、ツアー客が救出された地点などを確認。悪天候下でツアーを続行したガイドの判断が適切だったのか調べ、今後ガ イドらの業務上過失致死容疑での立件を視野に捜査を進める。
実況見分は、道警の捜査員8人と現場付近に詳しい山岳ガイド1人で行われ、7月16日の遭難当日に一行が出発したヒサゴ沼避難小屋付近、男女5人が死亡した北沼付近の2カ所を調べた。ツアーで無事だったガイド2人は、体調不良のため立ち会わなかった。
道警のヘリでヒサゴ沼避難小屋に到着した捜査員らは、午前8時半ごろから実況見分を開始。小屋の前で花を手向け、周辺の写真を撮るなどした。
この後、捜査員らは北沼付近まで進みながら、当日一行が移動した経路を検証。亡くなった人の発見地点なども確認した。
実況見分は27日も行い、9月にはあらためて2人のガイドを伴って実施する方針。道警は7月18日にツアーを企画した旅行会社「アミューズトラベル」(東京)の本社などを業務上過失致死容疑で家宅捜索している。
【from Editor】避けられた山岳遭難事故
新聞記 者の仕事をしている限り、「死」を扱うことは避けて通れない。日々の紙面に死に関する記事が載らない日はないくらいだ。もちろん死の原因はさまざまだが、 中には避けられたかもしれない死もある。一般の人たちが犠牲になる山での遭難事故もその一つといえるのではないだろうか。
近年は健康志向の高まりから、中高年を中心に空前ともいえる登山ブームになっている。その一方で、警察庁によると、山岳遭難は昨年、件数、人数、死者・行方不明者ともに過去最多となった。このうち8~9割は40歳以上の中高年という。今年も7月に北海道・大雪山系のトムラウシ山へのツアーに参加した中高年登山者8人が凍死したのをはじめ、山での遭難事故が相次いでおり、関係団体は注意を呼びかけている。
最近の山岳遭難記事を目にするたびに、山に登りたいと飛び込んだ大学のクラブで先輩から言われた言葉を思い出す。「山登りの楽しさは山行計画を達成して得 られるが、時には引くことも必要」。引くことの経験で忘れられないのはリーダーとして尾瀬に行ったときのことだ。鉄道とバスを乗り継いでようやく湿原入り 口に着いた日、後輩の一人が発熱した。さらに天候は下り坂の予想。後輩は「大丈夫です」と言ってくれたが、その夜、下山を決めた。ミズバショウが咲く尾瀬沼や燧(ひうち)ケ岳などはガイドブックの中だけの風景となったが、判断に間違いはなかったと今でも思っている。
「登山は自己責任」とよく言われるが、団体行動の場合はリーダーの責任も重い。トムラウシ山事故の場合もガイド(リーダー)がいながら、なぜ悪天候で登山を続けたのか、計画に無理はなかったか、防寒対策は十分だったか-など、安全管理に問題があったとみて警察が捜査を進めている。
登山は自然が相手である。夏とはいえ、紺碧(こんぺき)の空にそびえ立つ頂や高山植物が咲く稜線(りょうせん)上の山道から遠くの山並みまで見通せる風景 が続くわけはない。いったん天候が崩れると気温も急激に下がり、軽装では太刀打ちできなくなる。ザックが重くなろうと防寒具は必携なのである。
今年は冷夏で山岳地帯の天候も不安定な日が多いという。山登りを楽しもうとするなら、自分の体力にあった無理のない計画と十分な装備を整え、状況次第では 引くことも忘れないでほしい。紙面から避けられたはずの山岳遭難事故がなくなることを願いたい。(大阪整理部長 小代みのる)
【北海道遭難】ガイド全員ラジオ持たず 2日前の予報で天候判断
北海道・大雪山系トムラウシ山(2141メートル)で7月、旅行会社「アミューズトラベル」(東京)が主催した登山ツアーの一行18人のうち8人が凍死した事故で、ガイドがラジオを持参せず、遭難当日の天候は2日前に携帯電話サイトで確認した予報を基に判断していたことが、同社への取材で分かった。
同社が参加者や遺族に配った経過説明文などによると、遭難前日の7月15日、ガイドは宿泊した避難小屋で翌日の天気について、携帯サイトで14日に確認した予報から「午前中までは崩れるが午後からは大丈夫」と予想した。
同社幹部は、ガイドが14日の情報を基に判断したのは「携帯電話が通じず、情報を更新できなかったため」と説明。3人のガイド全員がラジオを持たなかった点は「問題だったかどうかは分からない」としている。
【北海道遭難】雄大な自然にひそむ危険、悪条件重なれば…
日本百名山のひとつ、トムラウシ山は一年で最も美しい季節を迎えていた。その夏山で、なぜ初心者ではない大勢の中高年が遭難したのか。
北海道山岳連盟常任理事の荒堀英雄さん(62)は説明する。中高年を中心に毎年約2500人が山登りを楽しむ山だが、気候の変化が激しいという。
8人が死亡したツアーが16日朝に出発したヒサゴ沼避難小屋は比較的風が弱い場所だった。「しかし、山の稜線(りようせん)に出た途端、強風が吹き付けて くる。ガイドはその風の強さで小屋に戻るか判断するはずだが、ツアーだと日程が決まっているから戻る決断をためらってしまう可能性がある」と話す。
札幌管区気象台によると、トムラウシ周辺はこのツアー初日の14日こそ晴天だったが、15日は北海道北部を低気圧が発達しながら通過。16日も低気圧の影響下にあり山岳部は雨が降っていた。
16日午前9時ごろの山頂付近の推定気温は7~8度で風速は20~25メートル。体感温度は風速が1メートル強くなるごとに1度下がるとされる。さらに雨も降った。専門家によると、雨に濡れた状態で風が吹くと体温が急激に下がり低体温症になるケースがあるという。
「風、雨と悪条件が重なった。ガイドは安全なところに案内したかっただろうが…」と残念がるのは北海道山岳ガイド協会会長の川越昭夫さん(72)。
気象などの厳しさから、北海道の2千メートル級の山は、本州の3千メートル級の難易度があるとされる。さらに事故現場は尾根が広く、風雨を避ける場所が少なかった。
川越さんは「周辺にある岩のすき間に潜りこむにも、荒れ狂う天候では場所を探すのも難しい。今年は残雪も雪渓も多く、ルートから外れるのも怖かったのだろう」と推測する。
さらに、「北海道の山は本州に比べ、登山者のための設備が乏しい」と川越さんは指摘。北海道によると、ヒサゴ沼避難小屋を出るとトムラウシ山を下りるまで避難小屋はなく、逃げ場がないという。
避難小屋はただ単に避難するだけではなく、今回のツアーのように宿泊場所として使われることも多い。「雨が降れば風雨をしのげる避難小屋にみんな逃げ込 む。そうすると、小屋内は一杯で立錐(りつすい)の余地がなくなり、ろくに眠れず体力をそがれることもある」。川越さんは「行政は避難小屋の増設など、登 山者のための施設充実も考えてほしい」と訴えた。